講義レポート

第2期レクチャーレポート no.01 2017.08.04

講義

プロジェクトと「まち」を結ぶ -『まちの見方・調べ方』と『パブリックライフ学入門』

中島直人 氏(東京大学准教授)

プロジェクトスクール@3331第2期、第1回目のレクチャーは東京大学准教授の中島直人氏を迎え、プロジェクトと「まち」を結ぶための様々なリサーチ方法を学びました。プロジェクトを実施する舞台として「まち」を考えた際、その課題の解決や、その個性を生かすことで、プロジェクトがより開かれたものになります。今回のレクチャーでは、課題や個性をどのように見出すのか、まずは講義で学び、その後実際にリサーチに取り組み、最後にチームごとに発表を行いました。

1日目:プロジェクトと「まち」を結ぶ -『まちの見方・調べ方』と『パブリックライフ学入門』 -講義 (8月1日)

講義の導入では「まちの見方・調べ方- 地域づくりのための調査法入門-」(朝倉書店, 2010)と「パブリックライフ学入門」(鹿島出版会,2016)の2冊を取り上げながら、リサーチ活動の様々なアプローチ手法を学びました。

プロジェクトの企画運営にあたって、“実際に”役に立つ調査をするためには、事前準備と現場での行動量が重要です。準備としては、歴史・地形・空間・生活など様々なレイヤーでの情報をできるだけ多く集めます。これらの下準備の有無によって、リサーチの質が変わってくると言っても過言ではありません。

準備が完了したら、実際に現場に繰り出し、地域を歩いて気づくことのまとめ、地図へのプロット、インタビューなどを行います。最終的にリサーチした情報を整理し、課題や個性を浮かび上がらせていくのです。

また、リサーチの対象とするエリア=公共空間における人の動きや暮らしなどの活動(パブリックライフ)を観察することで、より深い考察を与えることができます。

講義の最後には課題発表。「この夏、夜の練成公園」と題し、アーツ千代田3331の前にある公園を舞台に、夏の夜の利活用方法案を発表することになりました。

2〜3日目:リサーチ活動(8月2〜3日)

講義を受けて、早速各班リサーチ活動を開始。まずは資料を揃え、リサーチの内容を固めていきます。歩いて地図に書き込みながらテーマを絞り込んでいくチーム。古地図や歴史を調べて、場所がもつ意味合いを探るチーム。下調べを終えて、近隣の方にインタビューをするチームなど、思い思いの手法でリサーチを進めます。

4日目:成果発表(8月4日)

2日間のリサーチを経て、いよいよ発表です。

全チームを通じて浮かび上がってきたこの場所の要素としては、秋葉原と上野の間に挟まれた、生活よりの比較的静かな空間であることや、実際にお住まいになっている住民とオフィスで働く人(昼間住民)の2種類の人がいることなどが挙げられました。

プロジェクトとして提案されたものの一部を紹介します。

・「桑茶畠から、見上げる星空」
公園に生えている楠にLEDライトをちりばめて天体に見立て、静かな時間を過ごしてもらう。(明治維新の折に大名屋敷が荒廃し、土地としてリセットして桑茶畠を作ったことで賑わいを取り戻したこの場所と、静かな空間で1日をリセットする意味を込めて。)

・「おかえり、カレー」
大きな通りに面しておらず、静かであるが少々閉じられた空間に位置しているこの場所で、家庭的なイメージのカレーをフックに住民と働く人の相互コミュニケーションを図るイベントを実施する。(神田はカレー店が多いことも踏まえて。)

発表後、中島さんからは、要素をたくさん盛り込んだ大きなイベントを仕掛けること以外にも、明日からでもできるような気軽さや、関わりの持ちやすさ、継続性を鑑みてプロジェクトの立案を行うことをアドバイスいただきました。

Topic複層的なレイヤーでまちを捉え、文脈の中にプロジェクトを位置づける

「“誰かのため”“皆のため”という、ある程度のパブリック性・コモン性を持つものをプロジェクトと定義するならば、プロジェクトはその舞台としての『まち』の存在を無視できません。まちを複層的なレイヤーで捉えるリサーチを行うことで、その課題や個性を引き出し、具体的なアクションを見出すことができるのです。」(中島さん)

地形や歴史など、過去積み上げてきたものや、今現在空間としてどのように存在しているか、人々の暮らしや動態などの観点から、それぞれに適切なリサーチを施すことで、プロジェクトの必然性を高める。こうしたプロセスがプロジェクトの厚みや耐久性に繋がるのだと感じました。

実施概要

  • 日時2017年8月4日(金)
  • 講師中島直人 氏(東京大学准教授)
  • 参加人数29名