講義レポート

第3期レクチャーレポート no.8 2018.11.05

講義

コミュニティデザインの実践例 ―地域づくりの具体例とプロセスから学ぶ―

山崎亮 氏(コミュニティデザイナー)

アーツプロジェクトスクール第3期、8回目はコミュニティデザイナーの山崎亮さんを迎え、「コミュニティデザインの実践例 ―地域づくりの具体例とプロセスから学ぶ―」をテーマに講義を行っていただきました。人のつながりが希薄な社会状況の中、コミュニティがもつ力が注目され、新しいつながりや関係性を通じて自分たちの力で課題を解決しようという動きが高まっています。そんな現状を背景に、全国を飛び回り地域ブランディングや中心市街地活性化、医療福祉など幅広い分野で人がつながるしくみをつくり出している山崎さん。今回はコミュニティデザインの第一人者である山崎さんに、地域でプロジェクトを動かしていく上での肝となるポイントを学びました。

参加者の興味と注目を集める工夫とは?

今、多くの地域で住民参加型のまちづくりワークショップが行われていますが、そこにはやり尽くされた感もあり「ポストイットと模造紙の退屈なイメージ」「やらされている感じがある」「飽きられている」といった意見も。講義前半では、山崎さん率いるstudio-Lの最新の活動事例を通じ、そんな現状を打破するためのユニークなワークショップのアイデアを見ていきました。

山崎さんが携わるプロジェクトでは、平均的に3年ほど時間をかけるそうですが、中でも準備に時間をかけるのが、参加者同士がざっくばらんに話すためのツールやプログラムづくりです。
「参加者は仕事でその場に来るわけではないので、理論的で正しい理由を並べるだけでは来たいと思ってはもらえません。参加したくなる、話したくなるような工夫が必要です。」(山崎さん)

今回紹介していただいたワークショップの事例の中には、パーティーさながらの雰囲気のもの、バーベキューをしながら会話重ねるもの、人生ゲームなどのオリジナルツールを使ったものなど、目からウロコのユニークなアイデアばかり。手がけるワークショップのすべてが、参加者同士が関係性を構築するための重要な場であり「いかに興味をもってもらえるか」という視点で徹底し設計されていることがわかります。
はじめは乗り気でなかった人が自ら積極的にプロジェクトに関わるようになり、長い時間をかけて対話を繰り返し、プロジェクトが動き出していく。そこにはどんな仕掛けがデザインされているのでしょうか? その答えを探すべく、講義中盤では様々な地域づくりの実践例とプロセスを、順を追って見ていきました。

コミュニティデザイナーは人を導かずして導くもの

後半は、約10分のグループワークで感想や意見を共有した後、質疑応答へ移りました。アーツプロジェクトスクールを通じて、実際に地域でプロジェクトを動かそうとしている生徒たちが気になるのはやはり、ファシリテーションについて。質疑応答では、人を巻き込み動かしていくコミュニティデザイナーの考え方や手法についての質問が多く上がりました。

studio-Lにはファシリテーションのマニュアルはありません。メンバーたちは、リーダーを見本として現場での経験を積み、そこから自分自身に合った手法を自ら探し見つけていくそう。
「ファシリテーターは思考回路もやり方も人それぞれですが、どんな人でも『自己覚知』が重要です。自分が他人にどう見られているのか、自分のキャラクターをよく知った上で人に受け入れてもらうための振る舞いなど、よく意識して進めていくことが大切です。」(山崎さん)
ただし、「参加者の話し合いを上手くまとめ、彼らの活動を支援するのがコミュニティデザイナーだと思われがちですが、それは少し違います」とも山崎さんは続けます。
コミュニティデザイナーは、参加者から出てくるアイデアを“目利き”のように判断しながら、参加者とのキャッチボール繰り返していくことで、参加者のアイデアを軸にした持続的なにプロジェクトが発展していきます。
「プロの方向性を押し付けるわけではなく、かといってただ話し合いをまとめて進めるだけでもない。コミュニティデザイナーはその中間の立場にいるものです。」(山崎さん)

人を動かすための原則とサイクル

講義終盤では、人が動きたくなるしくみと考え方についてわかりやすく話していただきました。
「関係→思考→行動→結果のサイクルを意識し、まず関係の質を高めることを一番に考えます。多くのプロジェクトは、行動ばかりを頑張ってしまいますが、無駄だと思えても長い時間をかけてチーム(関係)をつくるからこそ、その活動が継続していきます。」(山崎さん)
プロジェクトに関わる人々がイキイキと輝き、物事がうまく回っていくのは、この「関係の力」があるからこそ。
集まった人同士が安心して対話ができる関係性を構築できると、相手の意見の本当の意味を汲み取れたり、質問の真の目的が見えてきます。すると、どんなコミュニケーションやアイデアを出し合えば良いのかが見えきます。そして、それによって次の段階である「思考」のアイデアの質が高まり、「行動」そして「結果」の質が高まっていくということです。

スクール生たちは約3ヶ月後の卒業に向け、多様なコミュティデザインのあり方から今すぐにでも取り入れていきたい工夫や考え方をたくさん吸収した様子。プロジェクト実施への士気を高めた2時間となりました。

[講師プロフィール]
山崎亮(やまざき・りょう)
studio-L代表。コミュニティデザイナー。社会福祉士。建築・ランドスケープ設計事務所を経て、2005年にstudio-Lを設立。地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。著書に『ふるさとを元気にする仕事』(ちくまプリマー新書)など。

Topicアーツプロジェクトにおけるアートとデザインの力

「アートやデザインは、単に作品を作って展示して誰かに見せるということ以上に、人の心が動き『一緒にやってみたい!』『それをやったら楽しそう!』と思う、そんな力を持っています。アートの思考回路は、お金や法律からできあがる解決法とは全く違うところから、人々の共感を集めてプロジェクトを動かしていく。それがアートプロジェクトの大きな特徴ではないでしょうか。アート的に考え展開していくことで、今まで思いもつかなかったような革新的なプロジェクトを起こすことができると思います。」(山崎さん)

実施概要

  • 日時2018年11月5日(月)
  • 講師山崎亮 氏(コミュニティデザイナー)
  • 参加人数