講義レポート

第3期レクチャーレポート no.9 2018.11.21

講義

プロジェクト実現の資金調達について ―文化芸術に事業性を持たせるために―

小田嶋Alex太輔 氏(株式会社EDGEof 代表取締役Co-CEO)

アーツプロジェクトスクール第3期、9回目は株式会社EDGEof 代表取締役Co-CEOの小田嶋Alex太輔さんを迎え、「プロジェクト実現の資金調達について ―文化芸術に事業性を持たせるために―」をテーマに講義を行っていただきました。スタートアップをメインにした新規事業立ち上げの専門家として、グローバルに活躍する小田嶋さん。スタートアップという観点から、プロジェクトの性質や目的にあった資金調達方法や事業計画のコツなど、アーツプロジェクトにも活用することができる知識を、事例や用語説明を交えながら非常にわかりやすくお話してくださいました。

SustainableでなくScalableを目指す「ビジネスアート」

EDGEofではクリエイターとのコラボプロジェクトなど、クリエイティブな活動にも力を入れているそうですが、今回紹介してくださったのが、アートとビジネスの文脈を混ぜて橋渡しをし、新たなイノベーションを探る「ビジネスアート(※)」の取り組みについて。(※ビジネスアートは小田嶋さんらEDGEofメンバーが作った造語)

そもそもスタートアップには定義として
① 確立されたモデルのない新しいビジネスであること
② 加速度的な成長曲線でスケールアップしていく
③ 資金調達方法として、生み出したものではなく将来生み出す価値への投資を募る
という特徴があります。ビジネスアートでは、アート活動にこのようなスタートアップの手法を取り入れ事業生を持たせる試みにトライしているそう。
「スタートアップというのはScalable、成長しないといけません。アーティストの方はSustainable、いわゆるアート活動で生きていければ良いというラインを、自給自足を目指すところで止まってしまうことが多いと思いますが、私たちはそれを超えて加速度的に成長していくアート活動ができないかということにも取り組んでいます。」(小田嶋さん)

実際にアート活動を事業化する具体的な進め方として、「自分たちのやりたい活動の本質をとらえ抽象化し、それをビジョンとして事業プランを練る」いう手順も指南してくださいました。
ただし注意点として「向き不向きがはっきりと分かれるため、すべてのアート活動に適応できるわけではありません」というアドバイスも。

何よりも大事なのはスピードと行動力

次に、クラウドファンディングやICOといったスタートアップで用いられる様々な資金調達の手法についてご紹介していただき、それぞれの性格の違いやメリット・デメリット、そしてアーツプロジェクトへの適応性や相性も見ていきました。

事業計画について話す場面では「スタートアップでの事業計画は出資者を説得させるためのツールでしかありません。実際にはプロジェクトが計画通りに進むことはほとんどなく、緻密なシミュレーションは無駄といえます。」と小田嶋さん。ただし、「それを作るプロセスで自分たちのやるべきことや作業の共有の仕方がクリアになる」というメリットがあるそう。
収支計画・コスト・ビジネスモデル、それぞれの考え方や作り方、頭に入れておきたいコツも伝授してくださいました。現在進めているアーツプロジェクトに活かせるテクニックも多く、スクール生たちはさっそく頭に叩き込んでいました。

専門家として長年の経験から生まれる助言はどれも説得力のあるものばかり。最後に小田嶋さんがアーツプロジェクトに事業性を持たせるため最も重要なポイントとして上げたのが「スピードと行動力」です。
「計画はあくまでスパイス。プロジェクトにはアクシデントがつきものです。結局のところは計画性よりもスピードと行動力。臨機応変に状況に対応しアップデートしていく反射神経を鍛えることが大切です。」(小田嶋さん)

質疑応答では、「事業化しにくいと思えるボランタリーな活動でもスケールしていくことを諦めるべきではない。」ともおっしゃっていました。
事業化する視点からプロジェクトの本質をクリアにし、広がりの可能性を探っていく。その姿勢を持てるかどうかは、プロジェクトの未来に大きく影響してくるはず。アーツプロジェクトを事業として考え続ける、諦めない姿勢を持つことの重要性を学びました。

[講師プロフィール]
小田嶋Alex太輔(おだじま・アレックス・たいすけ)
事業立ち上げに特化したコンサルタントとして、さまざまなスタートアップの設立や大企業の新規事業構築に携わる。共同代表を務めるEDGEofでは、クリエーターや起業家、研究者などが連携して事業創造に取り組み、イノベーションを加速するためのプラットフォームを展開している。

Topicクラウドファンドにはデメリットも

資金調達の方法として誰でも簡単に始められる「クラウドファンディング」ですが、デメリットもあるそう。それは対応すべき相手が多いため調達成功後も大変で、実際にはとても手間がかかるという点。資金は集まったものの、支援者への対応や進捗報告などにばかり時間を取られ、肝心な事業を進める妨げに…となってしまう場合も。クラウドファンディングを用いる場合は事前に入念な計画を立てておくことが大切です。
小田嶋さんが現在ビジネスアートの取り組みの一つとしてチャレンジしている「TOUCHY」は、まず実績と信頼を得るための手段としてクラウドファンディングを用いたそう。目的に合わせて上手く活用したいですね。

実施概要

  • 日時2018年11月21日(水)
  • 講師小田嶋Alex太輔 氏(株式会社EDGEof 代表取締役Co-CEO)
  • 参加人数